子どもの病気コラム

コロナウイルス関連

小児科目線からのオミクロン株の現状

Sunnyキッズクリニック院長の若林です。
デルタ株流行の時と異なり、軽症だけど感染力の高いオミクロン株の流行に伴い、
現在小児科クリニックの医療はかなり逼迫しており、
このままではクリニックの医療崩壊につながるのではと危惧しております。

本日はクリニックで勤務する小児科医の立場から、オミクロン株の特徴
現在のクリニックの状況などに関して解説していきます。

 

今までのコロナウイルス感染症の特徴

ざっくり今までのコロナウイルス感染症の比較を行いと思います。

潜伏期間に関して

元祖コロナ・・・5-14 日
デルタ株・・・4-14日
オミクロン株・・・3-14日

従来ウイルスに比較し、潜伏期間が短くなってきています。

特徴の比較(あくまでもイメージです)

元祖コロナ
感染力      ★★☆☆☆
免疫回避能力   ★★☆☆☆
重症化      ★★☆☆☆

デルタ株
感染力      ★★★☆☆
免疫回避能力   ★★☆☆☆
重症化      ★★★★☆

オミクロン株
感染力      ★★★★★
免疫回避能力   ★★★★★
重症化      ★☆☆☆☆

免疫回避能力とはワクチンを接種していてもかかってしまうというイメージです。
まとめると現在流行しているオミクロン株は、重症化のリスクは今までのコロナウイルスに比較すると低いものの、
潜伏期が短く感染力も高いため、急激に感染が広がっています。

感染力は強くなった反面、病原性(重症化のリスク)は従来株よりも低くなっています。

 

オミクロン株の特徴は?

日本よりも早く流行した国の報告などを参考にすると、
重症化リスクの低下や、死亡率の低下などが数多く報告されています。

デルタ株と比較して、入院,死亡のリスクが65%減ったとの報告があります。

オミクロン株で入院したり重症化する人は、ワクチン未接種の人がほとんどだったとの報告もあります。
以前の株よりは弱毒化したとはいえ、ワクチン未接種の人は特に気をつけた方がいいです。

2022年1月25日の厚生労働省HP内(https://covid19.mhlw.go.jp)の週別年代別陽性者数を見ると、20代の感染者数が圧倒的に多いことがわかります。同時に10代や10歳未満の陽性者数も増えてきています。

それに伴い当院で昼休みにクリニック外で行っているPCR検査でも陽性になるお子様が増えてきております。
電話診察で、子供たちの感染者の診療をしていますが、風邪とほぼ変わらない、軽症の患者さんが多いという実感があります。

多くの患者さんのメインの症状は発熱と咽頭痛が多く、2〜3日で回復するケースがほとんどで、回復した後、痰絡みの咳、鼻水が数日〜1週間ほど残ることがありますが、肺炎や酸素投与が必要な呼吸状態になることは稀です。

オミクロン株とワクチン3回目

ワクチン2回接種で手にした免疫のガードですが、それをすり抜けてくるのがオミクロン株です。

免疫のガードも時間と共に効果が下がります。3回目のワクチン接種が始まっていますが、
接種することで免疫のガードが復活し、発症予防効果が、約70%まで上昇します。

しかしながら発症予防効果は100%ではなく、3回接種しても感染は起こります。
そのため、引き続き感染対策(マスク、手洗い、換気)は必須と考えます。

ワクチン3回目のオミクロン株への効果ですが、
発症予防効果よりも、重症化予防にメリットがあるという論文報告があります。
入院の予防効果は52→88%に上昇したそうです。

あくまでも主観的なイメージと傾向なので参考にしかなりませんが、

オミクロン株に感染して
亡くなる可能性のある人→ワクチン未接種+重症化リスクあり
酸素投与など必要だが治る(中等症)→ワクチン2回+重症化リスクあり
酸素もいらない(軽症)→ワクチン3回接種

といったイメージです。

 

小児科クリニックの現状は?

小児にも広がり、感染者数がこれまで経験したことのない数になり、医療崩壊が始まりつつあります。

デルタ株までの時代は、重症患者さんに対応する二次救急以上の中核病院の医療圧迫が問題でしたが、
オミクロン株では重症化が少なく、感染者数が多いため、地域の一次救急を担うクリニックの医療崩壊の危機を感じています。

開院から閉院まで2台の電話、臨時で契約した電話も鳴り止まず、そこに加え、濃厚接触者、発熱患者さんの区分け、
陽性患者さんの発生報告手続きなども加わり、通常業務に支障が出ています。

当院スタッフも子育て世代が多く、お子様の登園先が休園になり、子供を預ける先がなく、勤務ができないなど、通常よりもマンパワーが必要な時期に、逆にカツカツのシフトで毎日望まなければならないのが現状です。

発熱患者さんを診察する際には、感染防御、場所の区分けが必要です。診察や介助の際に必要な、感染防護用具の着脱には時間はかかり、普段の診察に比較し時間もかかります。

接触を防ぎ空間的な隔離をするためには、受付手続き、会計手続きなども通常とは異なる方法を取らざるを得なく、医療事務の仕事も多くなっています。

処方せんを発行した場合には、感染が疑われる方が薬局に行かずに済むように、薬局に処方せんを届けたり、薬局から患者さんに薬を届けられるように門前薬局とのやりとりも煩雑化しております。

このような中で、濃厚接触者は急増しているため、全ての方にPCR検査を行うことが困難になってきています。

今までの濃厚接触→すぐに検査をするの流れから、まずは、自宅で待機をして、自宅療養を続け、症状が出てきたら医療機関に相談するといった方針転換の検討も必要と考えます。

同時に、医療資源の枯渇も深刻で、迅速抗原検査キットは入荷が未定、院内PCR検査を行うための機材も入荷のメドが立たず、もうすぐ底がつきそうです。

濃厚接触者が急増する中、どのようにして社会活動を維持していくのか?
これから課題は山積みだと思います。

毎日クリニックはバタバタしておりますが、
『今自分たちにできることはなにか?』
ここだけにFocusして、
第6波を乗り越えていけたらと思います。

さまざま工夫をして、クリニックを受診される方の不安が少しでも減ればと思い
スタッフ一同、開院から閉院までフルパワーで毎日頑張っています。

待ち時間や対応などに関して
忙しく至らない点もあると思いますが、
このような時期なので、少し温かい目で
見守り、応援いただければと思います。