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小児科コラム

四種混合ワクチンが生後2か月から接種可能に!!!!

2023年4月より四種混合ワクチンが生後2か月の赤ちゃんから接種可能になりましたので、その背景など含めご紹介したいと思います。

 

まず四種混合ワクチンは『百日咳』『ジフテリア』『破傷風』『ポリオ』の混合ワクチンであり、発症予防・重症予防に効果的とされております。これまでの予防接種の推奨スケジュールでは、生後3か月になったら早めに1回目生後4か月に2回目生後5か月に3回目1歳頃(3回目の6か月以降)に4回目と合計4回の接種が推奨されておりました。

https://www.know-vpd.jp/children/

しかし2023年4月より、乳児の『百日咳』罹患・重症化予防目的に四種混合ワクチンの接種開始時期を前倒し生後2か月に1回目生後3か月に2回目生後4か月に3回目接種が可能になりました。

 

●百日咳とは

『百日咳』は、百日咳菌が原因となる呼吸器感染症です。感染力はとても強く、基本再生産数(1人の患者が感染させる人数)は16〜21と、空気感染の麻疹同等とされます。

臨床経過は下記の3期に分けられます。

カタル期(約2週間):初期は感冒症状(鼻汁、咳etc.)から始まり、次第に咳症状が悪化していきます。

痙咳期(3〜6週間):次第に発作性の短い咳が連続的に起こるスタッカート(staccato)、続いて息を吸う時に笛のような『ヒュー』という音がなるウープ(whoop)を認めます。上記のような特徴的な咳嗽発作を繰り返すことをレプリーゼ(reprise)といい、時に嘔吐を伴います。

回復期(6週間以降):激しい咳嗽発作は次第に減少、2〜3週間程度で軽快するとされます。

回復するまで全経過で約2〜3か月と、咳が出る期間の長いことが『百日咳』という名前の由来とされます。

 

●乳児の百日咳

乳児期早期(生後3か月未満)の百日咳には特に注意が必要です。乳児期早期のお子さんが百日咳に罹患すると、無呼吸(息を止める)発作を起こしやすく、そこからチアノーゼ、けいれん、呼吸停止へと進展したり、肺炎、脳症を合併し、時に死に至ることがあります。そのため生後3か月になったら早めにワクチン接種するよう推奨されておりました。

 

●百日咳の発生状況と重症度

近年の感染症発症動向調査によると、百日咳の発生報告数は6か月未満のワクチン接種前の乳児と、4回接種した学童に多く認めておりました。国内の報告では、入院症例の多くを乳児が占めており、死亡例は乳児と高齢者にみられました。また無呼吸やチアノーゼなどの重篤な症状は月齢が小さい児に多く認めました。

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001014099.pdf

https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000992371.pdf

 

●乳児の『百日咳』罹患・重症化予防のために

生後2か月に接種した場合の有効性・安全性が臨床試験で確認、最もリスクが高い生後6か月未満の乳児の百日咳の罹患・重症化を減少させるため、四種混合ワクチンの接種開始月齢の前倒し(生後2か月)が決定しました。接種月齢を前倒し生後2か月から開始することで、各月齢の患者数の減少が期待できます。減少する患者数の合計は100人程度(下図★部分)に相当すると考えられております。

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001014099.pdf

 

●まとめ

4月から四種混合ワクチンが生後2か月から接種可能になります。その背景には百日咳による乳児の罹患・死亡報告が多いことが挙げられます。乳児にとって百日咳は非常に怖い感染症です。生まれたばかりお子さんをもつ親御さん、これから出産を控えている親御さんは、お子さんを守る上で、是非とも生後2か月のワクチン接種をご検討いただければと思います。