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もし子どもが頭をぶつけたら? 年代別の注意点と対策について

現在インフルエンザ、アデノウイルスはじめ様々な感染症が流行っておりますが、季節や流行問わず「子どもが頭をぶつけた!」という受診がしばしばあるため、今回は子どもの頭部外傷についてお話したいと思います。

子どもの救急医療電話相談窓口である#8000のデータを参照すると、子どもの救急相談において「頭部外傷」相談件数全体の2位を占めております。それだけ多くの親御さんが、子どもが頭をぶつけた時は不安に思っていることかと思います。

https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001024731.pdf

●子どもの頭部外傷の特徴

子どもは身長に対する頭部の割合が大きく、重心が高いため転倒しやすいです。加えて転倒・転落した際に防御態勢をとれないことが多く、そのため転倒・転落した際に頭部が先進部になりやすく頭部外傷の頻度が多いとされます。また成長に伴い行動範囲が広がり、またあらゆるものに興味関心が増えるため様々な事故が増加します。事故を防ぐために最も重要なことは『予防(環境整備)』であり、そのためにも子どもの発達について理解が不可欠です。そしていずれ子ども自身が自らを守れるように「教育」「安全の習慣化」を繰り返し行うことが重要となります。

●年代別の注意点と対策

①生後0〜4か月頃  

・発達段階による事故の特徴:

抱っこ中に保護者の転倒により子どもが転落するなどの事故が多いです。この時期は子ども自身の行動による頭部外傷は起こらないと思い込みがちですが、首が座り始めると手足をバタバタと動かし、それにより少しずつ位置が移動し、落ちるはずがないと思っていたベッドやソファーなどから転落するという事故が起きることがあるので注意が必要です。

・対策:

子どもを抱っこする際は、保護者自身がつまずく原因になるものが床にないように整理整頓を心がけましょう。また寝返りをうてない時期のお子さんでも、手足をバタバタすることで位置が移動し事故に繋がる可能性があることを認識しましょう。数秒でも目を離す際や、自分の手が届かない程度の距離を離れる際、子どもに背中を向ける際は、必ず柵付きのベッドや床に子どもを寝かせましょう

②生後5か月〜1歳頃

・発達段階による事故の特徴:

子どもの発達段階において最も劇的に運動機能の発達を遂げる半年間とされ(6-7か月:寝返り・お座り、8か月:ハイハイ、10-11か月:つかまり立ち・つたい歩き)、平面的にも立体的にも活動範囲が急激に広がります。昨日までできなかったことが急にできるようになるという感覚を味わう保護者が多いため、事故予防への対応が遅れがちです。この時期からベッドやソファーからの転落だけでなく、玄関の段差や階段からの転落という事故が増えます。また子どもが座れるようになると、自転車に乗ることができるため保護者の行動範囲が広がり家庭外での事故(自転車からの転落、ベビーカーからの転落)が起こるようになります。

・対策:

目を離す時は転落の可能性に十分注意を払いましょう。転落の可能性のある高さに子どもを置かない、寝かせる場合は柵付きのベッドを、階段から落ちないように柵を取り付けましょう。また椅子は子ども用の安定性が高く、体幹が固定できるものを使用しましょう。自転車での事故は子どもを後部に乗せたまま先に荷物を下ろしている間に、後部に座っている子どもが自転車ごと転倒するというケースが多いです。必ず自転車に乗る際はヘルメットを着用し、子どもが一人で自転車に乗せたままにする時間がないよう子どもの乗り降りの順番を考えましょう。

③1-3歳頃

・発達段階による事故の特徴:

運動面では1歳半頃にひとり歩き、2歳で階段の昇り降りが可能となり、3歳ではさらに高いところを目指すようになります。また三輪車などの道具を使って遊ぶようにもなります。精神面では2歳ごろより自我が芽生え、言うことを聞かなくなり始めます。それに伴いヘルメット、シートベルトを嫌がるようになります。また未知のものへの興味・好奇心が芽生え、保護者の制止を聞かず興味本位で何でもしたがり事故につながるケースが増えます。これまでの年齢と異なり、高いところへの興味が強くなり台を持ってきて登り転落したり、また階段が登れるようになるため1階に子どもがいる時も階段からの転落が起こります。

・対策:

床に転がっているおもちゃは転倒の原因になるため整理整頓を心がけましょう。高いところへの好奇心は想像以上だと思ってください。階段は目を離した隙に登っていくことを想定し1階にも柵を設置、また窓やバルコニー付近にはよじ登れるような台は置かないようにしましょう。ヘルメット、シートベルトの装着を拒否する際は、その必要性を繰り返し説明し、装着しなければ断固として出発しないようにしましょう。いうのはやすいものですが、装着しないという要求が通れば、次回以降はさらに難しくなり未装着が常態化してしまいます。また道路上での事故が増えてくる時期のため、最低限の交通ルールを絵本など使って何度も繰り返し説明しましょう。道路への飛び出しを防ぐため、車通りの激しい場所では必ず手を繋ぎましょう。

④4-6歳頃

・発達段階による事故の特徴:

自分一人でできることが増え、保護者から離れて遊ぶ時間が増えてきます。それに伴い屋外での事故が増加する年代です。またこの年代では「危険」が「遊び」の対象となることがあり、それを一度注意してもその注意は興味によってかき消されます。保護者も子どもの行動が予測しにくくなる年代といえます。

・対策:

最も重要なのは「教育」「安全の習慣化」です。聞き分けが次第に出てくるため、様々な場所と媒体でいかに常日頃から安全への教育ができるかが重要です。また安全習慣の確立は年代が進むほど難しくなります。物心つく前から日常的にヘルメットやシートベルトを装着など、繰り返し行い習慣化を目指しましょう。

●受診すべき症状、注意点は?

頭をぶつけた後に以下の症状がある場合は、緊急で医療機関を受診しましょう。また判断に迷う場合、心配な場合も医療機関への受診をご検討ください。

以下の場合は経過観察 or 心配な場合は診療時間内に医療機関を受診しましょう。

  • 頭をぶつけた直後に普段通り泣き、手足を左右差なく活発に動かしている
  • 嘔吐が1-2回のみ
  • 泣き止んだ後も、普段通りに過ごしている(哺乳ができている、食事がとれている、遊べている)

また頭をぶつけた直後に症状がなくても、時間差で症状が出てくることがあります。24時間はお子さんの様子を注意深く経過観察しましょう。

https://oshiete-dr.net/pdf/home_care2021.pdf

●まとめ

子どもの頭部外傷の多くは『予防(環境整備)』により防ぐことが可能です。子どもの成長に伴って思わぬ事故が増えてきます。本来喜ぶべきタイミングであったはずの子どもの成長に気づくのが事故であってはいけません。年齢ごとの発達段階、事故の特徴を理解し、常に一歩先を予想し対策をたてましょう。