Sunnyコラム

小児科コラム

子どもの未来を変える『舌下免疫療法』!!!

今年もスギ花粉の本格的なシーズンが始まりました!!!今シーズンのスギ花粉飛散量が大変なことになっていることは皆さんご存知のことかと思います。日本気象協会が出しているデータをみても、例年に比較して今シーズンはかなりの飛散量が予想されており、また現時点でも猛威を奮っております…。

https://tenki.jp/pollen/

現在多くのお子さんがアレルギー性鼻炎で当院を受診しております。お子さんの症状に合わせて、内服薬や点鼻薬、点眼薬を処方しておりますが、これらは一時的な対症療法に過ぎず、アレルギー性鼻炎を根本的に治療しているわけではありません。そのため今後もスギ花粉のシーズンになると症状が出現することが予想されます。

この連鎖を断ち切るための治療が『舌下免疫療法』になります。ここ最近耳にする機会も増えたのではと思います。また気になっている方も多いかと思いますので、『舌下免疫療法』について簡単にお話しできたらと思います。

 

◎アレルギー性鼻炎とは?

アレルギー性鼻炎とは、アレルゲンが鼻粘膜から侵入し免疫反応が起こることにより鼻汁・鼻閉・くしゃみなどの症状が引き起こされる疾患です。ダニやハウスダストが原因となる通年性アレルギー性鼻炎と、スギやヒノキなどの季節性アレルギー性鼻炎に分けられます。

2019年に行われた全国調査によるとアレルギー性鼻炎の有病率は49.2%。また通年性アレルギー性鼻炎が24.5%スギの季節性アレルギー性鼻炎が38.8%と報告されております。近年アレルギー性鼻炎の有病率は増加傾向で、日本人の2人に1人がアレルギー性鼻炎と、まさに『国民病』と言っても過言ではありません。

https://www.dani-allergy.jp/about.html

 

◎舌下免疫療法とは?

原因となるアレルゲンを投与し、体のアレルギー反応を弱める治療をアレルゲン免疫療法と言います。舌下免疫療法はアレルゲン免疫療法の1つであり、全ての重症度(軽症〜重症)のダニ、スギに対するアレルギー性鼻炎が対象です。2018年から5歳以上のお子さんに使えるように適応拡大されました。

舌下免疫療法は毎日服用すること、数年単位(推奨は3〜5年)継続しなくてはならないという点で根気のいる治療ではあるものの、自宅で簡単にできること、痛みがないこと、アナフィラキシーなどの全身性の副作用が少ないことが特徴です。継続して続けることで症状の軽減根本的な体質改善(長期寛解・治癒)が期待できます。

今後お子さんの人生には様々な重要な場面・出来事が待っていることかと思います。習い事の発表会やスポーツの大会、高校受験や大学受験、さらには就活などにおいて、アレルギー性鼻炎の症状により、集中力低下し本来の実力が発揮できない可能性があります。また抗アレルギー薬の種類によっては眠気が強く出てしまい、日々の生活に影響が出ることもあります。

個人的にお子さんで一番辛そうに感じるのは「受験シーズン」です。アレルギー性鼻炎による集中力低下は、受験勉強に大きく影響すると考えます。

◎舌下免疫の効果は?

一般的に舌下免疫療法は80%前後の方で有効性が認められております。またその他にも舌下免疫療法には新規アレルゲンへの感作を抑制する効果喘息発症抑制の効果などの報告もされております。舌下免疫療法は対症療法(内服薬・点鼻薬・点眼薬)とは異なり即効性が期待できるものではなく、6か月程度で効果が現れてきます。また推奨期間は3〜5年間と根気のいる治療になりますが、有効性が高いため全ての重症度(軽症〜重症)のダニ、スギに対するアレルギー性鼻炎に推奨されております。

しかし3〜5年間の治療終了後、永遠に効果が持続するわけではありません。下記の論文の報告によると、3年間の舌下免疫療法により臨床的効果期間は終了から7年4または5年間の舌下免疫療法により臨床的効果期間は終了から8年であったされます。

引用文献:Long-lasting effects of sublingual immunotherapy according to its duration: a 15-year prospective study     https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20934206/

個人的には4年間継続をお勧めします。例えば10歳で舌下免疫療法を開始し4年間続けることで、22歳まで効果が期待できるため、受験や就職活動など人生を左右する時期に本来の力が発揮しやすくなるのではないでしょうか。

 

◎舌下免疫療法の副作用

副作用の多くは局所的な症状であり、口腔内の腫れ・痒み咽頭違和感耳掻痒感が投与30分以内に認めることが多いとされます。これらの症状の殆どが投与後数時間以内に自然回復しますが、上記症状が何度も続く際は吐き出し法(飲み込まずに吐き出す)や抗アレルギー薬併用などの対処法があります。これら局所的な症状は投与開始初期のおよそ1、2か月に認めやすいため注意が必要です。

アナフィラキシー、蕁麻疹、喘息などの全身性の副作用は稀とされております。アナフィラキシーにおいては、海外の報告では1億回に1回と極めて稀ではありますが、注意が必要です。アナフィラキシーを疑う症状(息苦しさ、ゼイゼイ、意識がおかしい、腹痛・嘔吐 etc.)がある際は直ちに医療機関を受診してください。

 

◎舌下免疫療法に関する情報サイト

アレルゲン免疫療法ナビ  https://www.torii-alg.jp/

舌下免疫療法 医療関係者向け・患者向け資材  https://www.torii.co.jp/iyakuDB/utility/index.html?checked=sugi

 

◎まとめ

アレルギー性鼻炎は国民病といっても過言ではないほど近年増加傾向です。アレルギー性鼻炎は、お子さんの人生における重要な場面・出来事に影響を及ぼす可能性があります。そんなアレルギー性鼻炎の根本的な治療法が『舌下免疫療法』であり、アレルギー性鼻炎で苦しむお子さんの未来を変えるかもしれません。根気のいる治療ではありますが、ぜひご検討いただけたらと思います。