RSウイルスが流行に突入!!!
RSウイルスが流行シーズン入りの目安を超えました。
2021年夏(青線)にRSウイルス感染症の爆発的な流行があったことは皆さんの記憶にも新しいかと思います。
今年(赤線)の推移が2021年夏(青線)を彷彿させるような不穏な動きがみられるため、今回はRSウイルスについてお話したいと思います。
https://www.small-baby.jp/rsvirus/trend.html
●RSウイルスとは?
RSウイルスは呼吸器感染症の1つで、以前は冬に流行する代表的なウイルスでしたが、近年は夏にも流行がみられるようになりました。1歳までに50%、2歳までにほぼ100%のお子さんが感染するとされております。大人や年長児のお子さんではかぜ症状で済むことが多いですが、1歳未満の乳幼児(特に生後6か月未満)に感染すると重症化しやすく、細気管支炎や肺炎をきたし入院管理が必要になることが多い感染症です。
日本では年間に12〜14万人の2歳未満の乳幼児がRSウイルスと診断され、そのうち約4分の1(約3万人)が入院を要すると推定されており、低年齢のお子さんにとっては非常に厄介な感染症です。また低年齢でのRSウイルス感染が、気管支喘息の発症リスクを上げるという報告もあります。
●治療は?
RSウイルスに対して有効な治療法はありません。基本的には症状に合わせた薬を内服する対症療法や、呼吸サポート等を行う支持療法を行います。
●予防法は? RSウイルスに対するワクチンが遂に登場!
①シナジス
シナジスはRSウイルスに対する特異的抗体を用いた注射薬で、厳密にいうとワクチンとは異なります。シナジスは重症化リスクが高い方(早産児、先天性心疾患 .etc)を対象に、RSウイルス流行シーズンに月1回筋注することで重症予防効果が期待できます。シナジスは予防効果が長続きしないこと、高価な薬剤であることから、接種対象は重症化リスクが高い方に限定されております。
②RSウイルスワクチン
これまでRSウイルスに対するワクチンは存在しませんでしたが、待望のワクチンが開発に成功し、現在アメリカで承認に向け動いております。(RSウイルスワクチンの登場は、子どもに携わる多くの医療関係者が待ち望んでいたのではと思います…)
このワクチンについて簡単にご紹介します。母子免疫(妊婦にワクチン接種し、胎盤を経由し中和抗体が移行させ、子ども守る)を狙い、妊娠中期の妊婦に対してRSVワクチン接種することで、生まれてきたお子さんの重症化リスクを生後90日で81.8%、生後6か月で69.4%低下させることがわかりました。低年齢のお子さんにとってRSウイルスは厄介な感染症です。そんなRSウイルスからお子さんを守ることができるとても意義のあるワクチンだと考えます。現在日本でも承認申請中であり、多くのお子さんが救われる未来が近づいています。
https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2106062
③標準予防策
RSウイルスは飛沫感染、接触感染により拡がります。手洗い・アルコール消毒、マスク着用が有効です。日頃から外出後や調理・食事前などは石鹸でよく手を洗いましょう。またRSウイルスはおもちゃなどに付着してから6時間程度は感染力が保たれるとされ、かぜ症状の方が自宅にいる際は子どもの周囲のものをこまめに消毒しましょう。
●まとめ
RSウイルスは乳幼児期のお子さんにとっては非常に厄介なウイルスです。また低年齢での感染が気管支喘息の発症リスクを上げるという報告もあります。そんなRSウイルスに対するワクチンが今後日本でも始まるかもしれません。しかしながら接種開始にはまだまだ時間がかかると思いますので、今は出来る限りの感染予防をおこないお子さんを守ってあげましょう。