Sunnyコラム

小児科コラム

もし目の前で熱性けいれんが起きたら!?!?

この夏はあらゆる感染症が流行しました。記録的なヘルパンギーナの大流行、RSウイルスの流行、新型コロナウイルス第9波など、皆さんの記憶にも新しいかと思います。それに伴い自宅で熱性けいれんを起こしたなど、熱性けいれんに関する相談がここ最近増えてきたため、今回は熱性けいれんについてお話ししたいと思います。

●熱性けいれんとは?

熱性けいれんは、生後6か月から5歳頃のお子さんが発熱に伴って意識障害、けいれんを引き起こす疾患です。日本人の有病率は7〜11%(30人のクラスに2、3人程度)と言われております。また熱性けいれんの多くが発熱48時間以内に起こるとされます。

症状としては以下のようなものが挙げられます。

①意識がなくなる           ②眼球が上転、一点凝視

③手足がツッパたり、ガクガク震える   ④顔色が悪くなる

けいれんが止まると次第に顔色が良くなり、手足の力が抜け、目を閉じ眠りに入ったり、泣き出したりします。手足の力が抜けない場合や、意識や顔色が戻らない場合はけいれんが持続している場合があります。

熱性けいれんはいつ起きるかは誰にもわかりません。突然起きた時にパニックにならないためにも、熱性けいれんが起きたらどんな状態なのか知っておくのも良いことかと思います。以下は熱性けいれんを起こしたお子さんの動画になります(心臓の弱い方はご注意ください)。

https://www.youtube.com/watch?v=dwrPrBRRqyU

https://www.youtube.com/watch?v=i0AfWVe7CvY

●もし目の前で熱性けいれんが起きたら?

熱性けいれんが起こったら以下の点に注意して対応していただけたらと思います。

◎まずは落ち着きましょう。

とは言え、突然の緊急事態に落ちついてというのはなかなか難しいことかと思います。

初めて熱性けいれんをみた多くの親御さんがパニックになったと耳にします。目の前でお子さんが、突然眼球が上転しながら、手足がけいれんし、みるみるうちに顔色が悪くなったら誰だってビックリします。医療従事者であっても、自宅で起きて冷静に対応できる人はそう多くないと思います。もしパニックになってしまっても、その後自分を『ダメな親』だと責めないでください。

大事なことは困ったら助けを求めることです。本当に困った時やパニックになった際はすぐに救急車を呼んでしまって良いかと思います。それをとやかく言う小児医療従事者はいないと信じております。

救急車の現場到着時間は全国平均は9分前後と言われております。助けをよんだら一呼吸おき、落ち着いて以下の点に注意し対応していただけたらと思います。

◎平らで安全な場所で寝かせましょう。

ベビーカーの上や、抱きかかえた状態でけいれんが起きたら、転落し頭をうつ危険があるため必ず平らで安全な場所で寝かせるようにしてください。またその方がけいれんや子どもの様子が観察しやすいというメリットもあります。

◎気道が塞がらないように横に寝かしましょう

けいれん時に嘔吐してしまったり、気道分泌物が増えることがあります。嘔吐物や気道分泌で気道塞がらないように顔・体を横に向けて寝かせましょう。

NG行動: ・口の中に物や指を入れない  

     ・けいれん中、けいれん直後は飲み物や飲み薬を与えない(誤嚥の可能性あり)

◎けいれん時間、けいれんの様子を観察してください。

けいれん時間、けいれんの様子を可能であれば、スマホなどで動画撮影していただけると診断に役立つことがあります。

◎以下の場合、迷わず病院受診しましょう。

・5分以上けいれんが持続する場合     ・けいれん頓挫後、30分以上意識が戻らない場合

・けいれんを短時間に複数回認めた場合 ・けいれんの左右差がある場合

・けいれん前に強く頭をぶつけた場合

上記の中でも、5分以上けいれんが持続する場合直ちに救急要請!

また止まったようにみえても意識・呼吸がおかしい場合直ちに救急要請!

それ以外でも心配であればもちろん救急要請してください。落ち着いていれば、病院に連絡後、自家用車などでの受診をご検討ください。

●けいれんと間違えやすい症状は?

◎悪寒

熱が急激に上がり始める時、身体は体温を上昇させようと筋肉を細かく収縮させてブルブルと震えることがあります。けいれんのように全身が震えますが、意識はあり、視線が合ったり、意思疎通が可能な点が、けいれんとは異なります。

◎熱せん妄

高熱がある時に、視線が合わずボーッとしたり、訳のわからないことを言ったり、見えない物が見えるということがあります。意識がないようにみえますが、名前を呼んだり、肩を叩くなどの刺激で反応がある点が、けいれんとは異なります。

●解熱剤は使っていいの?

結論から言うと解熱剤使用で熱性けいれんが起こしやすくなることはありません。

過去に『解熱剤で熱をさげると、薬の効果が切れたときにけいれんを起こしやすいから使わない方がいい』という言説がありましたが、現在複数の研究から否定されております。2015年に改定された熱性けいれん診療ガイドラインでは、解熱剤を使用によって熱性けいれんを起こしやすくなることもなければ、予防効果もないだろとまとめられております。

https://www.childneuro.jp/modules/about/index.php?content_id=33

ちなみに日本で行われた大規模研究では、解熱剤使用により熱性けいれんの再発が減ったという報告もあります。まだまだ議論される部分かと思いますが、解熱剤使用は熱性けいれんに対して悪い影響はもたらさないと現在では考えられております。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30297499/

●けいれん予防のダイアップはどういうお子さんに使うの?

熱性けいれんの予防薬としてダイアップという座薬があります。ダイアップは熱性けいれんの再発リスクが高い下記の基準に当てはまるお子さんのみが適応になります。

以下の適応基準1)または2)を満たす場合に使用する

https://www.childneuro.jp/uploads/files/about/FS2015GL/8fs2015_detail4.pdf

というのも、ダイアップには副作用として使用後のふらつきや眠気などがあるため、再発リスクが低いお子さんに使用するのはデメリットの方が大きくなる可能性があります。

●まとめ

あらゆる感染症の流行から、熱性けいれんについての相談が増えています。熱性けいれんはいつ、どこで起きるか誰にもわかりません。熱性けいれんはどんな症状なのか、どう対応するべきか学び、いざという時のために準備をしておきましょう。