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過去最高レベルで猛威をふるう「プール熱」「はやり目」

今年はインフルエンザが季節外れの流行し、そして現在も猛威を奮っていることは多くの方が日々の生活で感じていることかと思います。その裏で現在「プール熱」「はやり目」も過去最高レベルで流行していることを皆さんご存知でしょうか?

「プール熱」や「はやり目」はアデノウイルスが原因で起こる感染症です。今回は現在の「プール熱」「はやり目」の流行状況、アデノウイルスについて簡単にお話ししたいと思います。

「プール熱」「はやり目」の流行状況は?

「プール熱」、「はやり目」は定点把握疾患で、特定の医療機関を定め、その医療機関を受診した患者数を基に流行状況を把握しております。下記のグラフの通り、今年は「プール熱」、「はやり目」共に過去最高レベルの流行状況となっております。

特に「プール熱」においては、東京都、埼玉県、大阪府などで警報レベル超えの流行を呈しております。主に夏(7、8月)に流行し秋に収束する「プール熱」ですが、秋口に入っても感染拡大傾向と、例年にない推移をしております。季節性インフルエンザ同様、異例な状況と言えます。

https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/diseases/pcf/pcf/

https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/diseases/epidemic_keratoconjunctivitis/epidemic_keratoconjunctivitis/

アデノウイルスとは?

アデノウイルスは50種類以上の型が存在し、そのウイルスの型により風邪(上気道炎・咽頭炎)などの呼吸器感染症、胃腸炎、プール熱、はやり目など様々な病態を呈します多くのウイルスの型が存在するため、免疫がつきにくく何度も感染することがあります。

◎呼吸器感染症

主としてアデノウイルス3型、7型が原因となります。上気道炎、咽頭炎、扁桃炎、また時に肺炎を引き起こします。鼻汁・咳・咽頭痛などの軽い症状で済むこともありますが、他の風邪を引き起こすウイルスよりも比較的症状が重く、高熱が4〜5日続くこともしばしばあり注意が必要です。

◎胃腸炎

主としてアデノウイルス31型、40型、41型が原因となります。乳幼児期に多く、腹痛・嘔吐・下痢を伴いますが、発熱の程度は軽いとされます。

プール熱(咽頭結膜熱)

主にアデノウイルス3型、7型が原因となります(その他にも2型、4型、11型)。プール熱は①発熱、②咽頭炎(喉の痛み・腫れ)、③結膜炎(目の充血・目やに)の3症状を特徴とします。。感染力が非常に強く、かつて夏にプールを介して流行することから「プール熱」と呼ばれるようになりました(現在は塩素濃度管理の徹底等により、プール水での感染はとされます)。

はやり目(流行性角結膜炎)

主にアデノウイルス8型、19型、37型など原因となります。目の充血・痒み・目やにが特徴的ですが、プール熱のような発熱、咽頭痛を認めることは稀とされます。感染力が非常に強く流行することから「はやり目」と呼ばれます。感染者が目を触った手、タオルなどを介して周囲の人へ感染します。

診断、治療は?

症状や周囲の流行状況などから推定し、診断は主に抗原検査(喉の奥や結膜から採取)が用いられます。アデノウイルスに対して有効な治療法はなく、症状に合わせて対症療法を行います。アデノウイルスに伴う発熱は遷延することもしばしばあり、加えてプール熱のように咽頭痛が強いと経口摂取不良から脱水・低血糖をきたす可能性があるため注意が必要です。またプール熱、はやり目のように眼の症状を放置すると時に角膜に炎症をきたし、眼の異物感・痛みをきたすことがあるため必ず病院に相談しましょう。

アデノウイルスに感染したら、自宅での感染対策は?

アデノウイルスは飛沫感染接触感染糞口感染により伝搬します。感染力が非常に強いとされ、家庭内や集団生活(学校、保育園等)では、さらなる感染を拡げないために感染対策が重要です。

◎飛沫感染対策:

咳やくしゃみをする際はマスク着用など咳エチケットを心がけましょう。

◎接触感染対策:

アデノウイルスはアルコールへの耐性があり、アルコール消毒の効果が乏しいとされます。流水・石鹸によるこまめな手洗いを行いましょう。またオモチャやドアノブなどよく触れる周囲のものは次亜塩素酸による消毒が有効とされます。また家庭内・集団生活では感染者とタオルの共有を避けること、水を介して感染することもあるため感染者と兄弟同士の入浴は避け、感染者の入浴は最後にしましょう

◎糞口感染対策:

感染後も1か月ほど便中にアデノウイルスが排泄されるため、トイレの後、おむつ交換の後、食事前には手洗いを心がけましょう。

いつから登園・登校可能か?

アデノウイルスによる感染症のうち、「プール熱」、「はやり目」は出席停止期間が学校保健法で定められております。

◎プール熱:『主要症状(発熱、咽頭炎、結膜炎)消退し、2日経過するまで出席停止』

改善まで個人差はありますが、発症から5日前後で治ることが多いため、登園開始まで1週間前後かかることが多いです。

◎はやり目:『医師が感染の恐れがないと認めるまで出席停止』

はやり目は発症から1週間が症状のピークとされ、その後数日で改善します。明確な出席停止期間が決められているわけではないため、経過をみて医師と相談しながら登園時期を決めましょう。眼の充血・目やに・眼の痛みの改善が登園の目安です。

よく間違えられるポイントですが、「プール熱」「はやり目」以外のアデノウイルス感染症は明確な登園停止期間は決められておりません。発熱がなく、経口摂取良好、活気がある場合は登園可能な場合が多いため、病院に相談いただければと思います。

まとめ

現在アデノウイルスによる「プール熱」、「はやり目」が過去最高レベルに流行しております。アデノウイルスによる発熱は遷延することが多く、またプール熱のように咽頭痛が強いと脱水や低血糖をきたす可能性があり注意が必要です。現在インフルエンザも同時に流行しております。できる限りの感染対策を引き続き行なっていきましょう。