子どもの病気コラム

アレルギー

気管支喘息・喘息の薬

こんにちは。Sunnyキッズクリニック院長の若林です。

今回は気管支喘息と喘息の薬について勉強していきます!

気道が炎症により様々な刺激に敏感になり、発作的に気道が狭くなり症状(咳、ヒューヒュー、息が吐きづらい、呼吸困難)を認めます。

喘息は乳幼児期(2-3歳がピーク)に発症することが多く、有症率は6-12歳で5.2%と報告されております。

発作・悪化原因としてアレルゲン(ハウスダスト、ダニ、ペットの毛)、呼吸器感染症、気象・気圧の変化、タバコ、運動が挙げられる。

発作時はバイタルサインや症状から重症度を分類、それに応じて治療を行います。中発作以上は入院での加療が必要な可能性があります。

発作頻度、発作時の重症度から評価し、長期管理薬(ロイコトリエン受容体拮抗薬、吸入ステロイド)でのコントロールを行います。

気管支喘息とは

気管支喘息は発作性に気道が狭くなることで咳、喘鳴(ゼーゼー・ヒューヒュー)、呼気延長(息が吐きづらい)、呼吸困難を繰り返す疾患です。これらの症状は自然ないし治療により軽快、消失しますがごく稀には致死的な経過となることがあるので注意が必要です。しかし気管支喘息の治療が確立(長期管理薬の吸入ステロイドの登場、夜間救急体制の配備)され、小児の喘息死亡率は人口10万人あたり0.0〜0.1まで減少しました

気管支喘息は慢性的な炎症により気道が敏感になり、刺激(アレルゲン、感染、タバコ、運動etc.)が加わると気管支周囲の平滑筋が収縮し気道内腔が狭く、また気道分泌物が増えさらに追い打ちをかけるように気道が狭くなり咳、喘鳴などの症状を認めます。発作がないときも気道粘膜に炎症が起き、刺激に敏感な状態になっています。無治療で放置してしまうと気道リモデリング(気管支自体が硬くなる)がおき治療への反応性も悪くなってしまいます。そのため日々のコントロールと環境調整が発作を起こさないための重要なこととなります。もし乳幼児期に喘息と診断されても適切な治療を受ければ60%は6歳までに寛解すると報告があります。もし治療をせずに放置し発作を繰り返していると気道リモデリングがおき気管支喘息は治りにくくなり、その結果成人の気管支喘息に持ち越してしまうことがあります

小児気管支喘息の90%以上がアレルギー体質を持っていると言われております。喘息にその他のアレルギー疾患の合併が多い(アレルギー性鼻炎58.1%、アトピー性皮膚炎29.3%、食物アレルギー、13.1% etc.)ことが知られており、喘息の発症・コントロール状況に影響するためその他のアレルギー疾患の管理も重要になります
気管支喘息の発症は乳幼児期(2-3歳ピーク)発症すること多く、6歳までの発症が80-90%を占めるため小学生以降の発症は少ないとされます。気管支喘息の有症率は小学生低学年13%、中学生9.6%、高校生8.3%、また学校保健で把握されている6-12歳の有症率は5.2%、重症喘息は1.3〜1.9%と確認されております。

発作時の症状は?

典型的な喘息発作の症状は咳、喘鳴(ゼーゼー・ヒューヒュー)、呼気延長(息が吐きづらい)、呼吸困難を認めます。特に夜間~朝方に発作を起こすことが多いと知られています。さらに重症な喘息発作であれば頻呼吸(呼吸回数増加)、肩呼吸、胸がベコベコへこむような呼吸を認めます乳幼児では苦しくでも症状を訴えることができないため機嫌が悪い、しゃべらなくなった、ご飯を食べようとしない時なども喘息発作のことがあるため注意が必要です。また乳児喘息(2歳未満の小児における喘息)は解剖・生理学的特徴から2歳未満は気道狭窄が強く現れやすく、症状の進行が速い点からもより慎重な対応が必要です。喘息発作の症状、呼吸状態、バイタルサインなどから重症度を4段階(小発作、中発作、大発作、呼吸不全)に分け、それに応じて治療を行います。

検査や診断はどうするの?

喘鳴を繰り返す場合は全て喘息とは限らず、他の疾患の可能性があるため注意が必要です。気管支喘息には明確な診断基準がないため他の疾患ではないことが確認できたら喘息「らしい」所見を合わせて診断します。具体的には繰り返す喘鳴・咳嗽のエピソード、増悪因子の有無(運動すると、ホコリを吸うとゼーゼー etc.)、アレルギー疾患の既往歴・家族歴、身体所見、症状、β2刺激薬吸入の反応性(吸入で喘鳴が改善するか)、その他補助検査(アレルギー検査、呼気NO、呼吸機能検査、胸部レントゲン etc.)により診断します
2歳未満の乳幼児は通常の風邪でもゼーゼー・ヒューヒューという喘息様の症状(喘息性気管支炎)が特に出やすいため『気管支喘息』と安易に診断することはできません。2-5歳のお子さんで24時間以上つづく喘鳴(ゼ―ゼー・ヒューヒュー)状態が1週間以上無症状である期間をあけて3回以上繰り返す場合は乳幼児喘息と診断します。

治療はどうするの?

気管支喘息は発作時、長期管理の治療に分けられます。

➀発作時
前述した発作時の重症度に応じて治療を行いますどの発作強度でもまず使用するのはβ2刺激薬です過去に喘息発作の既往があり、ご自宅にβ2刺激薬吸入ができる場合は迷わず吸入し吸入の反応を確認してください小発作~中発作でβ2刺激薬の使用後も症状が改善しない場合は医療機関を受診しましょう。改善はしたものの少し症状が残る場合は1~2時間後にもう1度吸入することができます。症状がなくなればそのまま様子をみること可能ですが、心配であれば医療機関へ相談・受診をしてください。大発作では生命に関わることがあるのでβ2刺激薬を使用しながらすぐに医療機関を受診してください。また喘息の吸入でも改善しない中発作、大発作は入院での加療が必要なケースが多いため入院可能な施設に紹介させていただきます。

➁長期管理
長期管理には重症度を分類し治療ステップを決めロイコトリエン受容体拮抗薬(オノン、シングレア、キプレス etc.)、吸入ステロイド(ICS)を用います。まず現在の喘息の発作の程度・頻度から重症度を間欠型、軽症持続型、中等症持続型、重症持続型、最重症持続型に分類し、症状を中心にした「見かけ上の重症度」を決めます

そしてもし現在喘息治療を行っていればその治療ステップでどの段階にいるかを確認し、前述の『見かけ上の重症度』と現在の治療ステップから『真の重症度』を判定します。

以下の表項目から喘息のコントロールを評価します。1ヵ月間のコントロール状況を診察時に判断しコントロール良好が3ヵ月以上続いた場合は治療ステップダウンを検討します。コントロール不良や比較的良好の場合でも、その状態が3ヵ月以上続く場合は治療ステップアップを検討します。

悪化因子どんなものがあるの?対策はどうするの?

喘息の発作誘発・増悪させる因子として吸入アレルゲン(ダニ、カビ、ペットの毛)、呼吸器感染症(RSウイルス、インフルエンザなどのウイルス)、空気汚染(タバコ、線香、花火などの煙)、PM2.5、黄砂)、気圧・気象の変動、激しい運動、過換気、ストレスなどがあげられます。上述の通り喘息の発作誘発・悪化させる因子が生活の中に多く潜んでいます。まずはタバコの受動喫煙を避けること、花火などで遊ぶ際には風上で煙を吸い込まないことが大切です。続けて環境整備をおこないアレルゲンとなるダニを減らすこと、ペットに対するアレルギーが症状を誘発していることが明らかなときは毛のあるペット飼育を避けることをオススメします。またアレルギー性鼻炎を合併し治療されないと喘息へ悪影響を及ぼしていることがあるので鼻炎にも適切な治療を受けることをオススメします。風邪も症状誘発の大きな要因のため予防のために手洗いをすることが有効です。

その他:発作時はどんな時に救急車を呼んだ方がいいの?

大発作を疑う所見があれば直ちに医療機関を受診してください以下のサインが1つでもあった場合は救急車を呼ぶこと考えてください

その他:吸入ステロイドって副作用はないの?

吸入ステロイドは気道に直接作用させることで炎症を効果的に抑えることが出来ます。ステロイド薬は経口薬や静注薬で長期の全身投与を行うと、成長障害・骨粗鬆症・満月様顔貌、糖尿病などさまざまな副作用が出現しますが、吸入で必要な場所だけに薬を届けることで副作用は著しく軽減し、ガイドライン推奨量で用いれば副作用は「ほとんどない」といってよいレベルとなります。最近の研究では小児期に吸入ステロイドを使用した患者さんが成人になった時わずかな成長抑制(平均身長が約1.5 cm低い)が報告されていますが、発作で入院を繰り返すようなことを防げるためメリットがデメリットを遙かに上回ると考えます。なるべく副作用を避けるためには吸入で咽頭などに付着した薬は洗い流すために吸入後にうがいをしてください

その他:吸入ステロイドの吸入方法ってどんなものがあるの?

吸入ステロイドの使用には薬がうまく気道に届くように正しく吸入することが重要です。吸入器具は➀ネフライザー、➁pMDI+スペーサー、➂DPIタビュヘイラー、④DPIディスカスと様々あるため年齢を考慮しその子にあったものを提案させていただきます薬の吸入を毎日きちんと続けることが喘息のコントロールにはとても重要です

その他:ダニ対策ってどうしたらいいの?

ダニ対策は喘息予防のための環境対策で最も大切です。喘息の原因となるチリダニは布団、カーペット、布製ソファーなどの中で繁殖し、湿気を好み、人間のフケや食べかすなどを餌としています掃除機をこまめにかけること、布団などをよく干して乾燥させること、カーペットやぬいぐるみなどダニのすみかになるものはなるべく減らすことをオススメします。中でも1日の中で最も長く過ごす布団の管理はとても大切です。

その他:喘息と診断されたらペットはどうしたらいいですか?

ペットの毛やフケはアレルゲンとなり、喘息の発作誘発・悪化因子になります。飼い始めた時に問題なくても数年後からアレルギー症状が出ることもあるため、喘息と診断された場合は毛のあるペットの飼育はオススメできません。しかし家族の一員であるペットをすぐに手放すことは難しいことかと思います。ペットを寝室に入れない、屋外で飼育する、定期的に洗うなど実施可能な対策から始めてみましょう

その他:運動するといつも咳こんでしまします。運動させない方がいいですか?

運動は喘息の発作誘発・増悪因子の一つですが、適度の運動は子どもの体力づくりに欠かせません。すでに喘息の治療が開始されていて運動時の症状を繰り返す場合は喘息のコントロールが不十分であり治療内容の変更が必要と考えられるのでご相談ください。また水泳は重症な喘息をかかえる子供でも発作が起こりにくいスポーツとされ呼吸法の習得、筋力増強効果が見込まれるといわれています水泳に限らず、本人が楽しんで続けられる運動やスポーツをすることがよいかと思います。症状なく運動ができることを目指して必要な治療を行いましょう。

 

正しい知識を持って病気と向き合っていただけたらと思っています。

お困りの際はいつでもご受診ください。

ではまた!