子どもの病気コラム

アレルギー

即時型食物アレルギー

こんにちは。Sunnyキッズクリニック院長の若林です。

今回は即時型食物アレルギーについて勉強していきます!

原因食物摂取後2時間以内にアレルギー症状を示すことが多いです。

全年齢での主要な原因食物は鶏卵、牛乳、小麦であり、それらで全体の72.5%を占めます。特に鶏卵、牛乳、小麦は年齢と共に耐性を獲得する事が多く、有病率は年齢を経るごとに減少していきます。

診断には問診が最も重要になります。

最も信頼度が高い検査は食物経口負荷試験です。特異的IgE抗体検査はあくまで補助検査であり高値だからといってアレルギーの原因とはかぎりません。これまで食べられていた食物の除去は不要です。

治療として最も重要なのは正しい診断に基づいた必要最小限の原因食物の除去です。“念のため”、“心配だから”といって、必要以上の除去は禁物です。

即時型食物アレルギーとは

即時型食物アレルギーは最も典型的なタイプで原因食物摂取後2時間以内にアレルギー症状を示すことが多いですアレルギーを引き起こす物質をアレルゲンといい、大部分は食物に含まれるタンパク質です。タンパク質は加熱や酵素により形が変化したり、消化酵素によりアミノ酸が切断されることで、アレルギー症状が出にくくなります。即時型食物アレルギーの原因食物は全年齢では鶏卵、牛乳、小麦の順に多く、これら3つで全体の72.5%を占めます。

また年齢別に原因食物の内訳は変化していきます。即時型食物アレルギーは乳幼児期に発症することが多く、0-1歳では鶏卵、牛乳、小麦が上位を占めます。2-3歳になると魚卵が一番多くなり4-6歳では果物、7-19歳では甲殻類、20歳以上では小麦が多くなります

即時型食物アレルギーの有病率は年齢により異なり、乳児期5-10%、幼児期4.9%、学童期2.3-4.6%との報告があります。乳幼児期に主要な原因食物の鶏卵、牛乳、小麦は成長と共に耐性を獲得していくことが多く(3歳までに50%、学童まで80~90%)、有病率は年齢を経るごとに減少していきます。学童から成人で新規発症する即時型の原因食物は甲殻類、小麦、果物、魚類、ソバ、ピーナッツが多く、耐性獲得の可能性は乳児発症に比べて低いと言われています

症状はどんなものがあるの?

典型例では原因食物摂取後2時間以内に以下のようなアレルギー症状を認めます蕁麻疹などの皮膚症状、まぶたが腫れるなどの粘膜症状、腹痛、嘔吐などの消化器症状、咳や息がしづらいなどの呼吸器症状、複数の臓器に症状が出現して急速に症状が進行するアナフィラキシー、血圧が低下して意識がもうろうとするアナフィラキシーショックがあります

即時型食物アレルギーの症状には、アレルギー症状は皮膚が最も多いと報告されております。

診断はどうするの?

診断にはまず問診が重要になります。疑われる原因食物は何か(摂取量や調理方法)、どのような症状が出現したか、摂取から症状出現までの時間経過について聴取します。他にも疑われる原因食物の接種歴や再現性、既往歴、アレルギー疾患の家族歴などが重要な項目になります食物アレルギーが疑われる原因食物についてアレルギー検査(当院では特異的IgE抗体検査)を行い、感作が認められれば食物アレルギーの診断に至ります。しかしながら問診や検査で原因が特定できない場合も多くあり、その場合は食物経口負荷試験を行います。食物経口負荷試験は最も信頼度の高い検査であり、その子の安全摂取可能量とアナフィラキシーのリスク評価を行い、少量から複数回に分けて摂取させてアレルギー症状の有無を確認し確定診断に至ります

前述の特異的IgE抗体検査はあくまで補助検査の一つです高いからと言って食物アレルギーであるというのは誤りです。これまで食べれていた食物は例え特異的IgE抗体が高値であっても除去する必要はありませんのでご注意ください

治療はどうするの?

食物アレルギーの治療には食物を完全に除去する方法(完全除去)、摂取しても症状が出ない量まで摂取可能とする方法(部分除去)があります。前述した通り乳幼児期の食物アレルギーは年齢を経るにつれ改善し自然に治癒していく可能性が高いことがわかっております。原因食物、年齢、摂取時のアレルギー症状の重症度などを考慮し治療法を選択します

食物アレルギーの治療で最も重要なのは『正しい診断に基づいた必要最小限の原因食物の除去』です
必要最小限とは以下の通りです。

①食べると症状が誘発される食物だけを除去(“念のため”、“心配だから”といって、必要以上の除去は禁物)

➁原因食物でも症状が誘発されない “食べられる範囲” を決め、積極的に摂取する

完全除去、部分除去、除去解除については食物経口負荷試験で判断します。行うタイミングについては問診や定期的に行う特異的IgE抗体検査が参考になります。下記の図に従って段階を踏んて除去解除を目指します。

少量・中等量の食物経口負荷試験を行い、陰性の場合はそれを上限に自宅で繰り返し摂取し症状が出現しないことを確認してください。自宅での摂取は体調が良く、医療機関に受診できる時間帯(午前中~お昼)が望ましいです。自宅で症状なく食べることができれば、それより多い量の食物経口負荷試験を行い、段階的に安全に食べられる量を確認しながら除去解除を進めます。最終的に日常摂取量が摂れることを確認して自宅での除去解除とし、さらに体調不良や食後の運動、入浴などで症状が誘発されないことを確認できれば自宅以外でも除去解除となります。

その他:食物アレルギーはどうして起こるの?

本来であれば細菌やウイルスなどの『外敵』に対して働く免疫応答が、無害である食物に対して何らかの原因で『外敵』であると認識してしまうために起こります。発症原因は完全には分かっていませんが世界中でそれらを探る研究がなされております。

その他:アレルギーといわれて間違えられやすい食品にはどんなもの?

以下の図に間違えられやすい代表的なアレルギーと食品の組み合わせになります。鶏卵アレルギーでも鶏肉や魚卵を除去する必要はありません。牛乳アレルギーでも牛肉を除去する必要はありません。小麦アレルギーでも殆どの人が醤油は除去不要です。

その他:食物経口負荷試験ではどんなことをするのですか?

原因食物を複数回に分割して少量摂取し症状の出現がないことを確認したうえで徐々に量を増やし、アレルギー症状の有無、どの程度の量でどれくらいの重症度の症状が出現するか確認します。食物経口負荷試験で摂取する量は問診、これまでのアレルギー症状、特異的 IgE 抗体値等を参考にして決めます。最後に摂取してから2 時間程度はアレルギー症状が出ないかどうか経過を確認します。途中でアレルギー症状が出た場合はそれ以降の摂取は中止し、症状を改善するための治療を行います。負荷試験結果によって原因食物の除去を継続するか、どの程度の量が摂取できるか判断します

その他:原因食物の除去を指示されました。どのように離乳食を進めたら良いでしょうか?

食物アレルギーがあっても原因食物以外の離乳食開始の時期を遅らせる必要はありません。原因食物を除去しながら通常通りに離乳食を進めましょう。食物除去により栄養状態が悪化しないように他の食品をバランスよく食べるようにしましょう食物アレルギーと診断されても成長に伴い食べられるようになることが多いので、定期的に病院を受診し原因食物の摂取開始時期について相談しましょう。また不足する栄養素はほかの食品で補い、バランスのとれた食生活を心がけましょう。特に乳製品を除去する場合にはカルシウムが不足しないようにアレルギー用ミルクや他の食品で補うようにしましょう。

その他:発症予防に関するコンセンサスはありますか?

以下が食物アレルギーガイドラインに記載されている発症予防のコンセンサスです。アレルギーの分野は日々新しい報告があります。発症予防に関しるエビデンスはその都度更新していきます。

その他:園・保育所(園)・学校での対応はどうなの?

園や学校にお子さんの食物アレルギーの情報を具体的に知らせるために「生活管理指導表」の提出します。給食は安全性を最優先にするために原因食物に関しては除去することを基本とし、誤食のリスクを高める複雑な対応は推奨していません。食物を扱う活動や宿泊行事の際には特別な対応が必要となりますので、園・学校にその都度確認をしましょう誤食などによりアレルギー症状が出た時の対応について、あらかじめ治療薬(抗ヒスタミン薬、ステロイド内服薬など)を処方してもらい、施設の職員へ使用するタイミングを伝えておきましょう。アナフィラキシーの既往がある場合にはアドレナリン自己注射薬(エピペン ®)も必要になります。

 

正しい知識を持って病気と向き合っていただけたらと思っています。

お困りの際はいつでもご受診ください。

ではまた!