子どもの病気コラム
あれ?こどもが突然肘を動かさない。肘内障の原因と整復方法
Sunnyキッズクリニック院長の若林です。暖かくなってきて、風邪や花粉症と共に外傷での受診も増えています。
クリニックを開院してから4ヶ月経過しますが、肘内障での受診が意外と多いことにびっくりしています。
この疾患は劇的に改善したことがわかるので、整復し終わったときにご家族がびっくりされることも多いです。このブログを読むことで、肘内障が起こる仕組み、予防方法などを理解することができます。今日も一緒に勉強していきましょう😁
肘内障ってなに?
手をつないでいたお子さんが突然勢いよく走り出し、思いがけず、腕を引っぱってしまうことは非常によくあることです。しかし、このような動作が原因で、お子さんの片腕が急に動かなくなってしまうことがあります。病名こそ知られていないものの、決して珍しくはない病気が肘内障(ちゅうないしょう)です。
肘内障は肘関節を構成する、輪状靭帯と橈骨頭(とうこつとう)が外れかかる亜脱臼を起こした状態で、輪状靭帯が発達していない1歳未満から6歳ぐらいのお子さんに多い疾患です。肘内障の約50%はお子さんの手を引っ張った際に起こります。
その他の50%はお子さんが転んで手をついたときや腕をひねったとき、肘を打ったときなど、多岐に渡ります。
どんな症状が出るの?
肘内障を起こすと腕を動かせなくなるため、お子さんは片腕をだらんと下げた状態になります。
肘を動かさない限り骨折のような激しい痛みは生じないため、多くのお子さんは泣くことなく、少し寂しそうな表情をされています。このような特徴から、病院の待合室にお子さんが座っていると、一見しただけで「あのお子さんはおそらく肘内障だろう」と推測できることが多々あります。
肘内障では骨折と異なり、腫れは生じません。腕は動かないものの手指は動く、循環の障害のサインである 手の指の変色もみられない(青白くならない)ことも肘内障の特徴です。また、私たちがお子さんの手に触れると、きちんと触られているという感覚(触覚)を感じます。
そのため、(1)感覚(2)運動(3)循環 が正常に機能していることが判断できた時点で、私たちは肘内障の可能性を疑い、保護者の同意を得て整復を試みます。クリニックではこれらの判断を約1分程度と短時間のうちに行っています。また、上記のように肘内障を疑う特徴が揃っており、なおかつ「引っぱった」という情報が得られた場合は、その時点で整復を試みるため、レントゲン検査は行いません。
治療はどうするの?
治し方には2つの整復法があります。ひとつは前腕を内側方向へと倒すように圧をかける「回内法」(左のイラスト)、もうひとつは、外側方向へと倒し、更に肘を曲げる「回外・屈曲法」(右のイラスト)です。
どちらの場合も、患者さんの撓骨頭の部分に片手を置いて圧をかけ、もう一方の手を使って整復を行います。1998年に「成功率は回内法の方が高い」という論文が発表されており、当院でも回内法を優先的に行っています。整復には軽い痛みが伴うため、泣いてしまうお子さんが大半ですが、「クリック感がありお子様が泣いたときは成功した」と考えることができます。
その後、5分~15分ほど時間を置いて患者さんに「バンザイ」の姿勢をしてもらうと、腕が元通り使えることを確認できます。2度目の回内法と回外・屈曲法を試みても整復がうまくいかない場合は、レントゲン撮影などができる整形外科で整復を試みることとなります。
可能であれば発症後1日は公園など遊べる環境へ行くことや、保育園でのお外遊びを控えることが理想です。しかし、小さなお子さんに対して遊ぶことを制限するのは現実的には難しいことです。「可能な限り」あるいは「アクティブに遊びすぎない場所で」と言うぐらいの制限で考えるのがよいでしょう。
まとめ
今回は肘内障に関してまとめてみました。
起こる仕組み、治療法などに関して理解できたのではないでしょうか?
だんだん暖かくなってきてお外で遊ぶことも多くなるでしょう。そのような時に起こりやすいのがこの疾患です。
お子様がだらんと腕をしている、突然手を動かさなくなったなどある際は、肘内障を疑ってみてください。何かあればクリニックで整復させていただきます。
ではまた!
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