子どもの病気コラム

感染症

食中毒について

こんにちは。Sunnyキッズクリニック院長の若林です。

今回は食中毒について勉強していきます!

食中毒の原因として細菌性とウイルス性が大半を占めます。
細菌性の原因としてカンピロバクター、サルモネラが大半を占めます。
ボツリヌスや腸管出血性大腸菌(O157)は小児では重症化することがあるため特に注意が必要です。
ウイルス性の原因としてノロウイルスが大半を占めます。
食中毒予防の3原則:
① 調理前に必ず手洗い(菌をつけない)
② 生鮮食品はすぐに冷蔵庫へ(菌を増やさない)
③ 食材を中心部まで加熱する(菌をやっつける)

食中毒ってなに?

食中毒は人間に毒性のある細菌、ウイルス、自然毒(キノコ、フグなど)、化学物質、寄生虫などを摂取し主症状として消化器症状(嘔吐、下痢、腹痛)を呈するものの総称です。

上記のように原因は様々でありますが、食中毒発生総数の大半は細菌性、ウイルス性が占めております細菌性ではカンピロバクター、サルモネラが多く、他にもセレウス菌、ウェルシュ菌、黄色ブドウ球菌などがあります。ボツリヌスや腸管出血性大腸菌(O157)は小児では重症化することがあるため注意が必要です。ウイルス性としてはノロウイルス、ロタウイルスが大半をしめます

それぞれの症状、治療、予防は?

➀細菌性
●カンピロバクター
細菌性食中毒の中で発生件数が最も多い菌です。カンピロバクターは牛、羊、ニワトリなどの腸管内に保菌されており、生もしくは加熱不十分な鶏肉の摂取による感染例が多いです。焼き鳥屋で提供された鳥刺し、屋外イベントなどの出店で提供された生焼けの鶏肉などで集団発生した報告があります。

潜伏期は長く2-5日程度で、発熱、腹痛、下痢、血便などの症状を認めます

多くは抗菌薬を投与せずとも自然治癒するため、治療としては脱水にならないように水分摂取するなどの対症療法がメインとなります。菌が血液内に入り込むような重症例の場合は抗菌薬投与を行いますまれな合併症としてギラン・バレー症候群があり、感染後の手足の痺れがあった場合は早急に病院受診してください

予防として食肉は中心部までしっかり加熱する、食肉は他と調理器具・容器をわけて保存すること、調理器具・容器はしっかり洗浄・殺菌すること、食肉を取り扱ったらしっかり手を洗うことが挙げられます

●サルモネラ
原因として鶏卵の摂取が多いですが、稀にペットとして飼育しているミドリガメに触ったことが原因となった例もあります

潜伏期間は8-48時間程度で、発熱、嘔気・嘔吐、下痢、腹痛などの症状を認めます
乳幼児では敗血症や髄膜炎などの合併症をきたす事があるため注意が必要です。

サルモネラもカンピロバクター同様に多くは自然治癒するため、対症療法がメインとなります。菌が血液内の入り込むような重症例、また合併症のリスクが高いと判断した場合は抗菌薬投与を行います

●セレウス菌・ウェルシュ菌
芽胞といって特別な膜を形成する菌であり、熱や消毒に強いという特徴を持ちます

原因としてセレウス菌は作り置きしたチャーハンやパスタ、ウェルシュ菌は作り置きしたカレーやシチューの摂取が原因となることが多いです。

潜伏期間は数時間程度で腹痛、下痢、嘔吐などを認めます

自然治癒することが多く治療は対症療法がメインとなります。

熱に強く再加熱では予防できないため、調理前に食材をしっかり洗うこと、一度に大量に作り置きしないこと、調理後は速やかに食べるか、冷蔵庫で保存することが予防法となります。

●黄色ブドウ球菌

黄色ブドウ球菌の毒素が食中毒を起こします。この毒素は耐熱性であり加熱では防ぐことはできません調理する人の手から黄色ブドウ球菌が食品につくことが原因になるため、いわゆる手作り(おにぎり、サンドイッチ、弁当)の食品が原因となる事例が多いです。

潜伏期間が数時間程度で嘔気嘔吐、下痢を認めますが、発熱がないのが特徴です。

治療は対症療法がメインとなります。

予防としては調理前に手洗い、手に傷がある時は手袋を着用して調理すること、調理してから長時間放置しないことが挙げられます。

●ボツリヌス
ボツリヌス菌が産生する神経毒素が原因でおきる神経麻痺症候群をボツリヌス症といい、時に致死的になる危険な病気です。1歳未満の乳児のハチミツ摂取が原因となった事例があり、1歳未満の乳児にハチミツを与えないよう1987年に勧告が出されました

乳児は大人違い腸内細菌が未熟なためボツリヌス菌が繁殖し毒素を産生することで、便秘や哺乳不良、全身の筋力低下など様々な症状を認め、時に致死的な経過をたどるとされます

特異的な治療法はなく、予防が重要です1歳未満の乳児にハチミツは決して与えないでください
1987年の勧告以降は乳児ボツリヌス症は報告されておりません。

●腸管出血性大腸菌(O157)
毒性の強いベロ毒素を産生する大腸菌の一種であり、抗力の弱い小児では特に注意が必要です。時に溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などを合併し後遺症を残す例や死亡例も報告されております

この菌は牛、鳥などの腸管に常在しており、生肉(ユッケ、生レバー、鳥刺しなど)の食べることで感染するケースが多いとされます。また感染者の便を介して家庭内で二次感染を起こす可能性があるため注意が必要です。2011年に富山県の焼肉チェーン店で腸管出血性大腸O157の集団発生があった以降生レバーの提供禁止やユッケの提供厳格化した事は皆さんの記憶に新しいかと思います。

少ない菌量で感染が成立するとされ、3-5日の潜伏期間を経て激しい腹痛を伴う水様便や血便を呈します時に重症化を呈する症例もあるため、腸管出血性大腸菌O157による食中毒が疑われた際は入院施設へ紹介し入院加療も考慮されます

腸管出血性大腸菌O157は75℃以上の加熱1分程度死滅します。予防には生肉を使った肉料理は避ける事、肉の中心部まで十分に加熱することが重要です。その他にも調理前後手洗い・消毒も有効とされます

➁ウイルス性
●ノロウイルス
ウイルス性胃腸炎の項目をご参照ください。
ノロウイルスによる食中毒は冬季に多く、年間食中毒患者数の約半数を占めると言われております。感染経路としては加熱不十分の二枚貝(牡蠣など)の摂取、調理する人の手指を介して食品にウイルスの付着、感染者の嘔吐物や糞便を介した感染が挙げられます

少量のウイルスで感染成立すると言われおり、潜伏期間12時間~2日程度で嘔気嘔吐、下痢、腹痛の消化器症状や発熱を認めます

ノロウイルスに対しての治療薬はなく対症療法がメインとなります。消化器症状が強い場合は小児では脱水を呈することがあります呼びかけに反応が悪い、経口摂取がままならない、尿量が低下しているなどの所見を認めた際は点滴での補液が必要なことがあるので注意が必要です。

ノロウイルスはアルコールに抵抗性があると言われております。入念な手洗いのほか、汚物が付着した衣類などを処理する際は次亜塩素酸ナトリウムでの消毒が家庭内での二次感染に有効とされます。

その他:ノロウイルスの際に使用する次亜塩素酸ナトリウムの作り方は?

用意するもの
・水
・家庭用塩素系漂白剤(原液に含まれる次亜塩素酸ナトリウムの濃度は約5%)

➀糞便・嘔吐物が付着した床、衣類、トイレなどの消毒を行う場合
水500ml + 塩素系漂白剤10ml(ペットボトルキャップ2杯) 0.1%溶液を作り使用

➁おもちゃ、調理器具など直接手が触れる部分の消毒を行う場合
水2000ml + 塩素系漂白剤10ml(ペットボトルキャップ2杯)0.02%溶液を作り使用

 

普段からの手洗い、アルコール消毒、うがい、マスク着用などの咳エチケットで予防を心がけていただければと思います。

お困りの際はいつでもご受診ください。

ではまた!