子どもの病気コラム
頭部外傷について
こんにちは。Sunnyキッズクリニック院長の若林です。
今回は頭部外傷について勉強していきます!
頭部外傷のうち約60%が0-4歳児、1歳児が最も多い。
事故発生時期は6月を最高に夏が多く、土日、14-18時に多い。
外傷のうち、80-90%程度は軽症の経過観察できるもの。
受傷機転が軽い、意識消失なし、症状がないなどでは経過観察可。
お子さんの頭部外傷の特徴
お子さんは成人と比較し、頭部が相対的に大きいため、重心が高く転倒しやすいです。また、状況判断能力、危険を察知する能力に乏しいので、頭部の打撲をしやすいと考えられます。特に気をつけなくてはならないのは首の座る前の乳児です。(生後4か月程度まで)このころは、頭が体と比べて大きく、頭を打った時の手足の防御反応も十分ではありません。成長が著しい時期であるため、脳の発達と頭蓋骨の発達がアンバランスとなって、頭蓋骨と脳との間に隙間ができて、頭蓋内出血を起こしやすくなります。大人にとって低いと感じるところでも、子供にとっては2階くらいの高さのことがあるので、おおよそ1m以上の高さから落ちた場合には医療機関の受診を検討してください。
どこに注意してみればいいの?
では頭部外傷後のお子さんの状態に関してどのように注意して経過を見るべきか、説明します。以下の状態がある場合は医療機関を受診した方がいいと考えます。
●意識がしっかりせずに、視線が合わない、機嫌が悪い
●元気がない、活気がない、顔色が悪い
●嘔吐をした
●痙攣をした
●ミルクの飲みが悪い(乳児の場合)
外傷直後は症状がなくても遅れて症状が出ることがあるので、外傷後24時間程度は,症状が出てこないか慎重に観察する必要があります。
CT検査などはいつ必要なの?
お子さんが頭をぶつけた後、パパやママはもちろん打撲による傷も心配ですが、さらに頭の中に何か起こってしまったのではないかと心配されます。『見た目では、元気なように見えるが、頭をぶつけた時の音はすごい音がしたし大丈夫なのだろうか?』『大きなたんこぶができているけど、頭の中が心配だ。』などと考えると思います。頭の中に出血があるかどうかを確認するには、CTという検査をする必要があります。ドーナツ型の輪の中に入る検査で、特に痛いなどの苦痛を伴う検査ではないのですが、放射線を浴びる必要があります。
特に、小さな子どもでは放射線の被曝の影響は大人よりも大きく、撮影する際はしっかりとリスクを考え選択してあげる必要があります。とある研究では、2-3回の頭部CTにより脳腫瘍のリスクが約3倍になり、5-10回の頭部CTにより白血病のリスクが3倍になるといった報告もあり、余計な被曝は有害であることが知られています。もちろん被曝のリスクよりCT検査で得られるメリットが大きければ、私たちは迷わず頭部CT検査を実施します。しかし、さすがに頭をぶつけた子供全員に頭部CTを行う必要はありません。お子さんの症状から頭部打撲の危険度(リスク)を推測し、頭部CTをはじめとする精密検査の必要性や治療方針を検討します。
お子さんの頭部打撲に関しても、何か治療が必要になりそうな頭部外傷があるかのリスクを層別化するスコアがあり、PECARN(pediatric emergency care applied research network)と言います。2歳以上、2歳未満に分けて、色々な症状が全てない場合は、上のような治療の介入が必要になりそうな頭部外傷の確率は低いと判断されます。全てを、羅列すると専門的にすぎるため割愛しますが、一般の方でもわかりやすい症状について、挙げさせていただきます。
●意識状態の変化(不穏、傾眠傾向、同じ質問を繰り返す、言葉に対する反応が遅い)
●後ろ、横、上にあるたんこぶ
●5秒以上の意識消失
●嘔吐
●重度の頭痛
●両親から見て、様子がおかしい
●落下(2歳未満90cm以上、2歳以上150cm以上)
などが挙げられます。
万が一、皆さんのご家庭でお子さんが頭をぶつけてしまった際にはこれらの2つの列記した項目を参考に「気をつけて子供の様子を見守るか、早めに病院に連れて行くべきか」を判断する一助にしていただければと思います。
もちろん、一般の方での判断は困難であり、またお子さん1人1人で受傷起点などのバックグラウンドが違うので、もしご不安があるようであれば、クリニックへご相談いただければと思います。
お困りの際はいつでもご受診ください。
ではまた!