子どもの病気コラム

感染症

流行性耳下腺炎(ムンプス)について

こんにちは。Sunnyキッズクリニック院長の若林です。

今回は流行性耳下腺炎(ムンプス)について勉強していきます!

流行性耳下腺炎は『おたふかぜ』と呼ばれ、ムンプスウイルスの感染により起こる。
発熱、痛みを伴う唾液腺の腫脹(特に耳下腺、片側あるいは両側)を特徴とする。
感染力はとても強く、接触感染、飛沫感染により伝搬する。幼児期〜小学校低学年に好発する。
流行状況、ワクチン接種歴、身体所見から臨床的に診断することが多い。
注意すべき合併症として、髄膜炎、精巣炎、熱性けいれん、難聴などがある

どんな症状があるの?

流行性耳下腺炎は『おたふくかぜ』と呼ばれ、ムンプスウイルスの感染により起こります。ムンプスウイルスは感染力がとても強く、飛沫感染、接触感染により伝搬します

感染者は幼児期から小学校低学年に多く、好発年齢は4〜6歳とされます。感染しても症状を認めない不顕性感染が30%程度と多く(低年齢ほど多い)、不顕性感染でも唾液中にウイルスを排泄しているため、感染コントロールに難渋する感染症です

感染から2〜3週間の潜伏期を経て、発熱、唾液腺(特に耳下腺、片側あるいは両側)の腫脹・痛みなどで発症します発熱は通常3〜4日程度続くとされるが、発熱を伴わない症例が2割程度存在する。耳下腺腫脹は片側から始まり3日目頃には反対側も腫脹し、腫れもピークとなり、7〜10日程度で消退します(両側の耳下腺腫脹は70〜80%程度)。唾液腺腫脹前から感染力をもち、唾液腺腫脹1〜2日前から5日までが感染力のピークとされます。

検査はどうするの?

症状、周囲の流行、予防接種歴 から臨床的に診断することが多いです。病原体診断として、抗体検査(血液)、ウイルス分離(唾液など)があり、臨床所見から診断に難渋する際に行うことがあります。鑑別疾患として化膿性耳下腺炎、頸部リンパ節炎、反復性耳下腺炎などが挙げられます

どんな合併症があるの?

注意すべき合併症として①無菌性髄膜炎、②精巣炎、③熱性けいれん、④難聴が挙げられます。特に髄膜炎の合併率は1.2%とされ、耳下腺腫脹1週間以内に発症することが多いとされます。特異的治療はないですが、予後は良好であり後遺症なく治癒します最も厄介なのが難聴です。過去の報告では難聴発生率は1/3500と推測されたが、片側性の高度感音性難聴をきたし聴力予後は悪いとされます。以上からいかにムンプスウイルスに感染しないか、『予防』が重要と言えます。

治療はどうするの?

現時点ではムンプスウイルスに対する効果的な特効薬や治療法はありませんが、ほとんどの場合1-2週間で自然治癒します。発熱や痛みに対して、カロナールなどの解熱剤・鎮痛剤などを用いて症状を和らげる対症療法を行います。口を大きく開けたり、食べ物の咀嚼する際に、頬や顎が痛み可能性があるため、食事は喉越しがよく刺激の少ないもの(ゼリー飲料、スープ、ヨーグルトなど)がオススメです。酸っぱい食べ物は唾液の分泌量が増えるため、痛みが強くなるため避けることをオススメします。顔の腫れや痛みが強い場合は、冷却してあげると軽減することがありますので試してみてもいいかもしれません。

予防はどうするの?

ムンプスウイルスは飛沫感染・接触感染により感染をひろげます。手洗い、アルコール消毒、うがい、マスク着用などの咳エチケットが予防につながりますが、感染力がかなり強く、また耳下腺腫脹前からウイルスを排泄したり、不顕性感染も少なくないため、感染のコントロールは難しいです。唯一の予防法はワクチンであり、日本では任意接種であり、1歳と就学前の2回接種することが推奨されています。有効性は高く、1回の接種で患者が88%以上の減少、2回の接種で97%以上減少したという報告があります。ムンプスウイルスは感染力が強く、また合併症として一生涯残る難聴をきたす恐れがあることからも、ワクチン接種がとても重要であると考えます。先進国で唯一定期接種となっていないのは日本のみであり、現在の接種率は30〜40%程度であるのが現状です。1日でも早い定期接種化が待たれます。

その他:いつになったら集団生活にもどれるの?

耳下腺、顎下腺、または舌下腺の腫脹を認めた後5日経過し、かつ全身状態が良好になるまでは、出席・登園停止となります。

その他:ここ最近の流行はあったの?

2016年に国内で非常に大きな流行がありました。中でも鹿児島県徳之島という島で行われた研究によると、1191人のムンプス患者を確認し、島民人口の4.7%という大きな流行でした。特に10歳未満の小児をみると、その年齢の1/3以上がムンプスにかかったこという規模の大流行でした。感染者の年齢の中央値は10歳で、残念ながら難聴を2人発症しました。

その他:おたふくワクチンの安全性ついて?

かつておたふくワクチン接種後の髄膜炎が話題となりました。現在の報告ではワクチン接種後に副反応疑いとして届けられた髄膜炎、脳炎、神経系障害を合わせても0.003%と報告されております。ムンプスウイルスに自然感染したときの合併率の1.2%と比べるとはるかに低いことがわかっています。

普段からの手洗い、アルコール消毒、うがい、マスク着用などの咳エチケットで予防を心がけていただければと思います。

お困りの際はいつでもご受診ください。

ではまた!